日本企業で働いた経験がある人であれば、だれでも有給休暇取得の難しさを感じたことがあるのではないでしょうか。企業にもよりますが、毎年の有給休暇をすべて使い切ったことがあるという人はいないのがほとんどでしょう。そうした日本企業におけるの有給休暇の取得状況とは大きくことなり、一般的にオランダ企業の人事チームや管理職は、社員の有給休暇取得に非常に積極的です。今回のブログでは、オランダの企業が社員に対して積極的に有給休暇の取得奨励をする本当の理由をお話いたします。

休暇取得による生産性の向上

オランダの人事担当者は、あなたが休暇をとることで、休暇後の仕事の生産性が上がると考えているため、社員が休暇を取ることを望んでいます。実際に、定期的に休暇を取る人は取らない人よりも幸福度が高く、生産性が高いという研究結果が出ています。休暇を取ることでリラックスして心とからだを充電することができ、休暇明けにはリフレッシュして仕事に取り組むことができます。今度、オランダで人事担当者が休暇を取るように勧めてきた場合は、ぜひ躊躇せずに休暇を取得してください。

社員のバーンアウト(燃え尽き症候群)を最小限に抑える

2023年の最近の調査によると、オランダでは従業員の5人に1人がバーンアウトの症状を訴えたといいます。一般的にオランダ人は健康的なワークライフバランスに関する明確なビジョンを持っている人が多く、バーンアウトのリスクは比較的低くなっています。しかしそれでも、今日オランダの人事担当者にとって、社員のバーンアウトを減らすことは最重要課題となっています。人事担当者は、バーンアウトが社員本人だけでなく、企業のビジネスに与える影響をよく理解しています。オランダでは、バーンアウトは長期的な病気とみなされ、疾患した社員は職場再復帰プログラムに参加する権利があるとされています。雇用主にとっては、社員が長期的な病気となってしまった場合、産業医と社員の面談のアレンジメント、「職場復帰計画」の作成(社員が病気により少なくとも8週間就業不能だった場合のみ)、労働者保険事業団(UWV)への報告義務など、さまざまなことが必要になります。それゆえ、オランダの人事担当者は、社員に過剰労働を強いることによって会社が得る短期的な利益は、社員のバーンアウトによって発生する長期的なコストに見合わないことを理解しています。そして、そうしたバーンアウトを防ぐための一つの方法として、社員に休暇を取ることを勧めます。

未取得の有給休暇は雇用主にとっての金銭的負債

オランダでは、雇用契約にて定められた労働時間に基き、年間を通じて有給休暇が累積されます(詳しくはこちらをご確認ください)。社員の退職時には、雇用主は未取得の有給休暇を金銭として支払う義務がありますが、この義務は雇用主にとっては金銭的な負担となります。それゆえ、オランダの人事担当者は社員の未取得の休暇数を常に確認し、取得できるタイミングがあればいつでも取得するよう、社員に奨励するのです。

しかしオランダでは、この有給休暇の買い上げには高率の税金が課せられます。つまり、有給休暇を金銭として受け取るつもりで溜め込むことは、最善の策とは言えません。つまり、有給休暇を使用しないでおいておくことは雇用主にとっても社員にとっても損をすることとなり、それゆえ有給休暇はきちんと取得するのが得策といえるでしょう。

未取得の有給休暇数の確認の複雑さ

オランダの法律では、フルタイムの契約を結んでいる場合、従業員は年間20日間の有給休暇を取得します。多くの場合、会社はこの法定最低日数よりもさらに多い日数の休暇を提供するポリシーを設定しています。次に、雇用主から有給休暇として「与えられる」祝祭日がいくつかあります。どれが有給休暇になるかは雇用主次第です。ただし、雇用主が休日として与えることを義務付けられている祝日もあります。

  • 新年(1月1日)
  • イースターマンデー
  • キリスト昇天祭
  • 聖霊降臨後の月曜日
  • クリスマス(12月25日)
  • ボクシングデー(12月26日)

その他、一般的に有給休暇として与えられる祝日は以下の通りです。

  • キングス・デー(4月27日)
  • 解放記念日(5月5日)

まとめると、有給休暇というのは、法定最低有給休暇日数に加えて、祝祭日と「会社規定」による追加休暇日数の合計を指します。会社規定の休暇は、積み立てた年の翌年6カ月後に失効します。法定最低日数の有効期限は、積み立てた年の翌年から5年間です。それぞれの失効期間が異なるため、どの有給休暇が取得されたかを記録しておく必要があります。

有給休暇は思っているよりたくさんある

オランダの従業員が利用できる休暇制度にはいくつかの種類があります。取得する休暇の種類(病気、休暇、産休・育休など)に応じて、休暇中の手当が支給されます。しかし、他の特別休暇を取得している間にも休暇を積み立てていることをご存じですか?例えば、病気休暇(オランダではこれも有給休暇の一種)を取得する必要がある場合、事実上勤務していなくても休暇日数を積み立てています。これは他のほとんどの有給休暇にも当てはまります。

まとめ

社員が仕事を休まなければならない理由は様々です。雇用主としては、変化する法律を確実に遵守し、社員に取得可能な休暇の権利を明確に伝えることが求められます。  オランダがOECDによるとワークライフバランスで最も優れていると評価されているのは、こうした休暇取得の権利によるところも大きいでしょう。社員のメンタルヘルスの観点から、適度な休息は欠かせません。ビジネスの観点からも、社員に気遣いやサポートを提供することは、定着戦略としてもメリットがあります。

オクタゴン・プロフェッショナルズは、30年の経験を持つオランダの雇用法の専門家です。オランダでの雇用に関するご相談はぜひオクタゴン・ジャパンデスクまで日本語でご相談ください。