オランダでは、働く人々ののワーク・ライフ・バランスを実現するため、様々な制度が整っていますが、そのひとつに多様な法定休暇取得制度があります。今回のブログでは、オランダで働く人が取得権利のある7つの法定休暇について解説します。

有給休暇

オランダでは、社員は最低でも週の通常労働時間の4倍に相当する時間数の法定有給休暇を受け取る権利があります。パートタイムの社員の場合、休暇の時間数はその人の労働時間に応じて計算されます。この計算に基づくと、フルタイムの社員は4週間の年次有給休暇を取得する権利があり、それは20日分の休暇に相当します。ただし、オランダの雇用主の多くは法定日数よりも多い年間25日の有給休暇を提供していることが一般的です。

社員は入社初日から有給休暇を取得することができます。休暇はできるだけ付与された年に取得される必要がありますが、未使用の非法定有給休暇は雇用契約終了時にオランダ民法に基づいて買い上げられます。超過分の有給休暇は、雇用契約終了時に最終給与または最終精算額から差し引かれます。

休暇中、雇用主は通常通り社員に給与を支払う義務があります。またそれとは別に、社員には年間給与の最低8%を休暇手当として受け取る権利があります。休暇手当は5月または6月に支給されます。

傷病休暇

オランダで働くすべての社員には傷病休暇取得の権利があります。この制度により、社員は職業上の理由だけでなく私的な理由により病気にかかった場合にも休暇を取得し、手当を受け取ることができます。雇用主には、病気となった社員の最も最近の給与の少なくとも70%を社員の傷病期間中支払うことが義務付けられています。雇用主の中には、福利厚生の一つとして、傷病期間中の給与を100%を支払う場合もあります。  

障害を持つ社員が病気になった場合、雇用主は労働者保険機関(UWV)で賃金補償給付を申請することが可能です。これは「ノーリスク保険」と呼ばれ、雇用主が社員の賃金を支払い続け、これに対して給付金を受給するというものです。

介護休暇

オランダでは病気にかかった肉親や家族のサポートをするために、介護休暇を利用することができます。この休暇は、病人が介護を必要とし、社員が介護を提供できる唯一の人物であることを取得条件とします。病人が入院している場合は、病院がケアを提供するため、介護休暇は適用されません。社員がこの休暇を取得する場合は、資格のある医療従事者による確認書を提出する必要があります。

社員は12ヶ月の間に、週の労働時間の2倍に相当する短期介護休暇を取得することができます。この間、雇用主は社員の給与の少なくとも70%を支払い続ける義務があります。  

命にかかわる病気の場合は、週労働時間の6倍を上限に長期介護休暇を取得することも可能です。ただし、この期間中、雇用主は社員の給与を支払い続ける義務はありません。

出産・育児休暇

産前産後休暇 

オランダ政府は、妊娠中の社員に対し、出産予定日の最低4週間前から休暇を取ることを義務付けています。妊娠中の社員は、4~6週間の産前休暇(出産予定日前)と最低10週間の産後休暇を取得する権利があります。出産が予定日より遅れた場合、出産休暇は実際の出産後に始まるため、合計が16週間より長くなる場合もあります。出産時に生まれてくる子供の母親が死亡した場合は、そのパートナーに産休の取得権利が発生します。

また、一人以上の出産が予定されている場合は少なくとも20週間の休暇を取得する権利があります。また、その場合、出産手当金を受け取ることができます。雇用主は、労働者保険機関(UWV)に妊娠・出産給付金を申請することができます。

パートナー/父親休暇 

社員のパートナーが子供を出産した場合、その社員にもパートナー/父親休暇の権利が発生します。この休暇のもとでは、出産後1週間、および出産後4週間はいつでも有給休暇を申請することが可能です。この際、雇用主はパートナー/父親休暇中の社員の給与の100%を支払うことが義務付けられています。  

2020年7月1日以降、社員は出産後6カ月間に5週間の無給休暇をパートナー/父親休暇として取得することができるようになりました。この場合、パートナー/父親休暇の給付は労働者保険機関(UWV)が管理し、社員の給与の70%を補助します。この給付金を受けるためには、この休暇を取得する社員自身がその申請を行う必要があります。

育児休暇

社員が法律上の親または養育者である場合、子供が生まれてから8年の間に26週間の育児休暇を取得する権利があります。この休暇は、雇用主が被雇用者に与えることが義務付けられています。一般に育児休暇は無給ですが、雇用主はその費用を一部負担することもできます。

養子縁組休暇

雇用主には、社員が子供を養子に迎え入れるか、または里子を引き取った場合、6週間の休暇を提供することが義務付けられています。このタイプの休暇は、両親ともに利用できます。休暇中、社員は労働者保険機関 (UWV)から給与に見合った養子/里親手当の給付を受けることができます。

業務上の理由がある場合にのみ、雇用主は社員がこの休暇を取得することを拒否することが可能です。

緊急休暇

オランダの雇用主には、社員の私的な緊急の用事を容認し、その間給与を払い続けることが義務付けられています。また、合理的な状況であれば、短期間の休暇も取得が可能です。この休暇は、怪我、病気、家族の死など、不測の個人的な事情が対象となります。

特別・臨時休暇

この休暇の取得は法律で義務付けられているわけではなく、社員と雇用主との間の個別契約または雇用契約に規定されている必要があります。具体的には以下のような状況で取得されます。

  • 結婚、結婚記念日 
  • 通院
  • 葬儀 
  • 引越し 
  • 勉強・研修・資格取得受験の目的 

まとめ

社員が仕事を休まなければならない理由は様々です。雇用主としては、変化する法律を確実に遵守し、社員に取得可能な休暇の権利を明確に伝えることが求められます。  オランダがOECDによるとワークライフバランスで最も優れていると評価されているのは、こうした休暇取得の権利によるところも大きいでしょう。社員のメンタルヘルスの観点から、適度な休息は欠かせません。ビジネスの観点からも、社員に気遣いやサポートを提供することは、定着戦略としてもメリットがあります。

オクタゴン・プロフェッショナルズは、30年の経験を持つオランダの雇用法の専門家です。オランダでの雇用に関するご相談はぜひオクタゴン・ジャパンデスクまで日本語でご相談ください。